2010年3月5日金曜日

『万人』検討ーその3ー

 今回は、読む前のイメージとのギャップが大きかったために、話が作品のエンターテインメント的側面に集まった印象でした。でも、それは仕方ないというか、500年前のヨーロッパの戯曲に対して、声を出して笑い共感することが出来た、そういうエモーショナルな反応をすることが出来たことへの感動が私達を包んでいました。

 古い作品を読むとき、作品を楽しむためには文学や歴史への教養といった予備知識が必要だと身構えがちですが、必ずしもそうではないのだということを今回感じました。もちろん、そういったものがあった方がより作品を多面的に読むことが出来ますし、作品を通じて歴史上の出来事に思いをはせるといった楽しみ方も出来ます。また、やはり翻訳に甘えた上でこのようにいっていることも、その意味を私達はもっと認識すべきでしょう。しかし、そうでなくとも我々の心に響いてくるような作品が、長い年月に耐え今に残っているのだと、改めて実感しました。

今回の朗読に使ったのは、
鳥居 忠信、磯野 守彦、山田 耕士訳『イギリス道徳劇集』、リーベル出版(1991)
より『万人』。

日本語で読める参考文献として、
グリン・ウィッカム著、山本浩訳『中世演劇の社会史』、筑摩書房(1990)

引用した原語(中期英語)は、
ここ(Corpus of Middle English Prose and Verse: http://quod.lib.umich.edu/c/cme/)に。
(なぜか手元にプリントしたバージニア大学のEText Centerのものはつながらなくなってしまったのですが。)

英語版wikipediaは、それ自体が充実しているとともに、現代英語訳や平易なガイダンスへのリンクがあります。

 次回は少しヨーロッパを離れシルクロードを東に、時代もまた1000年ほどさかのぼってインドの古典演劇に触れてみます。カレーが食べたくなってきました。

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